でも、「版画っていろいろ種類があって迷ってしまう、よく分からない」そんなふうにも思ってらっしゃるかもしれません。
今回はそんな方へ向けての、版画の種類、版画ならではの知っておきたい基礎知識をお話します。
まずは版画の種類から。
リトグラフ
これはよく流通している版画です。
石版画(せきはんが)ともいわれます。
石版の上に油性のチョークで図柄を描き、紙へ刷るものです。
リトグラフの制作で有名なのは、シャガール。
カシニョールやビュッフェのリトグラフも、今でも喫茶店とかで見かけることがあります。
シルクスクリーン
これは孔版画(こうはんが)と呼ばれ、木枠に張ったシルク(絹)などの布の織り目を通して絵具を刷っていくものです。
シルクスクリーンの作品で有名なのは、アンディ・ウォーホルなどです。
マリリン・モンローや花柄のものは今でも刷られて流通しています。
ヒロ・ヤマガタやラッセンなどの作品もシルクスクリーンですね。
銅版画
銅版画は、その中でもいろいろと手法があるのですが、大きく言うと彫刻法と腐食法があります。
彫刻法は、銅版に線を刻み込んでいく(引っかいていく)方法で描画しそれを刷るものです。
工程の違いによりエングレイヴィングやドライポイントがあります。
腐食法は、版面に耐酸性のニスを塗りそれを引っかき、それに腐食液を塗って、引っかかれて露出した銅版が腐食して描画しそれを刷るものです。
腐食時間によって線の強弱がつきペン画のような表現が可能となります。
エッチングやアクアティントなどの種類があります。
銅版画といえば、デューラー、レンブラントが有名です。
また日本の銅版画作家としては、長谷川潔、池田万寿夫、山本容子などが有名ですね。
木版画
これは彫刻刀で木を彫って版木をつくり、紙に刷るものです。
小学校の図工の時間に多くの人が経験するのではないでしょうか。
木版画の版面は凸版(とっぱん)になります。
銅版画は版面は凹版(おうばん)になります。
木版画でまず思い浮かぶのは写楽などの浮世絵ですね。
棟方志功も有名ですね。
版画の基礎知識 ~限定とサイン~
版画は、基本的に何枚も刷れます。
版面の耐久性の問題もあり(何回も刷ると磨り減ってしまう)、また美術品としての価値を守るためにも限定数を決めます。
一部の複製版画――オリジナル版画に対しエスタンプと呼ばれます――などで限定数がないものもあります。
大体300部から500部が一般的でしょうか。
数十部や1000部なども希少性や人気度によりいろいろあります。
大体画面の右下などに「123/300」などと作家の鉛筆サインとともに書かれています。
限定の番号も「1番だからいい」などといった番号による価値の優劣はありません。
サインは作家本人または著作権所有者などが1枚1枚チェックした作品という証です。
まれに数字の他にも「HC」「EA」などがありますが、それぞれ「版元保存版」「作家保存版」を意味します。
こちらもわりと市場に流通しています。
版画の基礎知識 ~カタログレゾネ~
版画作家はその生涯に沢山を作品を制作します。
それをすべてカタログに記録したものがレゾネと呼ばれるものです。
これは分厚い本になっています。
レゾネ番号が振られて、限定部数、サイズ、制作年、技法などが記録されています。
手に入れるのには、画廊、美術書を扱う古書店、オークションで取り扱いがある場合があります。
今だとインターネットで捜すのが手っ取り早いかもしれません。
ただ希少本なので、普通の本のようにどこでも簡単に手に入るものではありません。