複製画

前回のタイトル「油絵と日本画の違い、そして第3の絵画!?」で「第3のビール」のように「第3の絵画」なんて言ってみましたが、絵の購入を考える際に、複製画という選択肢もあります。

私自身、現在複製画の販売を行なっていることもあり、複製画の魅力についてお話したいと思います。

複製画は主に、モネやゴッホといった美術史に名を残すような巨匠の作品を複製したものです。

日本画の複製画もあります。

どのように複製されるのかは製造メーカーによって異なりますが、現在流通している複製画はこのようなものでしょう。

  • 美術印刷によって作られる複製画
  • 美術印刷されたものに職人が絵具で手彩色する複製画

また、これ以外にも中国などで作られている模写によるものなどもあります。

ただこれは原画の画家とは別の人間がすべて描くことになってしまうので、複製というより模写としての絵画という認識の方がいいように思います。

このサイトでは、上の2タイプのものを複製画としてお話します。

美術印刷によって作られる複製画

こちらはもっとも流通しているタイプの複製画。

同じ名画であっても、いくつかのメーカーから販売されていたりします。

最近は印刷の技術もより精度が高くなり――一般家庭のプリンターですら結構きれいに写真なども印刷できますからね――高精細で印刷されています。

また、メーカーにもよりますがキャンバスに印刷を施したり、油絵具の筆のタッチの凹凸を表現してあるものなど、いろいろと工夫はされています。

複製画の魅力のひとつは価格ですね。

数万円程度で額つきのしかも西洋美術の巨匠の「名画」を買うことができます。

あなたの好きなあの作品もあるかもしれません。

油絵や日本画を同様の値段で捜しても、なかなか満足のいくような作品を手にすることは難しい。

名の知られているような現代作家の作品は、もうすでにかなりの高値になっていることが普通です。

6号程度で数十万~といったところでしょうか。

また絵の難しいところは、近くのギャラリーなどで取り扱いがなかったり、作品のあるところへ行っても、選べる作品が限られており、自分が納得して買えるような作品に出会えるかというハードルもあります。

その点でも、複製画は基本的に手に入れやすいものです。

インターネットを利用すればお好きな作品をほぼ購入することができるでしょう。

美術印刷と職人の手彩色による複製画

この複製画はよくある印刷の複製画とは異なっています。

高精細な印刷を施す工程までは、ほとんど同じですが、その後の工程で、職人の手により実際の本画に使われている絵具とほぼ同じものを手彩色しています。

実際に色を上から筆で原画と同じように描いているのです。

大塚巧藝新社 巧藝画
この複製画は巧藝画(巧芸画・こうげいが)と呼ばれており、大塚巧藝新社で百年の歴史があります。

なんとこの技術を提唱したのは、あなたもおそらく知っているあの日本画の巨匠です。

横山大観。

現在の大塚巧藝新社の前身である、大塚巧藝社を創設した大塚稔氏はもともと美術作品である絵画を撮影をする写真家で、親しい間柄であった横山大観にこういう複製画を作ったらどうか提案され、今にその技術が伝えられています。

また手彩色を施す職人もただの絵師ということではなく、絵画の修復を手掛けるような熟練した技術をもつ方々です。

この大塚巧藝新社は今説明したことにもあるように、日本画を専門として巧藝画(巧芸画・こうげいが)を制作していますが、最近ではフェルメールなどの油絵も同様の技術を用いて制作しています。

複製画のいいところはリーズナブルな価格にありますが、同時に「安っぽいのではないか」という心配もあるかと思います。

まずこの「安っぽさ」はどこに由来するのかというと、それはまず「印刷」であるという点にあります。

印刷はパソコンのプリンターをイメージしてもらえばわかるようにインクです。

インクというのは染料です。

水溶性で扱いやすい。

絵具はすでに説明しましたが顔料です。

顔料というのは、鉱物などを砕いたものを思い浮かべてもらえばいいです。(※鉱物以外の顔料もあります)

染料と顔料は粒子の粗さが違います。

細かい方が発色が弱く、大きい方が発色が強い。

※顔料インクもありますが、分りやすく説明するために分けました。

顔料インクも結局インクとして扱うためそれほど細かい粒子にしたということです。

だからどうしても印刷だけのものは描写の再現性は高いのだけれども、発色が弱くなってしまいがちということになります。(新品の複製画であれば、普通の方はそれほどわからないと思いますが)

そういう意味でも巧藝画は、美術印刷による描写の再現と原画と同様の絵具による手彩色を両立させることはとても理にかなっていると言えましょう。

本当に「これが複製画か」と驚くような出来栄えです。

実際の絵具が手彩色されることで、人の手が入った、大げさな言い方をすれば魂が入っているかのような気品を感じさせます。

私ももうすでにたくさんの巧藝画をお客様へ納品させていただきましたが、感激にあふれたようなご感想を多くいただきます。

機会があれば、是非ご覧になってみてください。

おそらく美術館などで本物に普段から触れていらっしゃる方の方が、巧藝画のよさがよくわかるかも知れません。